保護司をお引き受けするにあたり
神戸市東灘区 長瀬猛
この度、公私ともにお世話になっている方からお薦め頂き、保護司をお引き受
けすることになりました。「保護司」は制度として知っておりました。また「社
会を明るくする運動」などの掲示物もよく目にしておりましたし、同僚など周囲
に保護司としての活動をしている人が複数おりますので、分かっているつもりで
した。しかし、いざ自分が保護司としての一歩を踏みだそうとすると、今までに
はなかったものが頭の中に浮かんできます。
犯罪を犯してしまった人と犯さなかった人の違いを考えるとき、自分自身のこ
とを重ねてしまいます。私は後者に分類される側ですが、明確な一線があって絶
対的な「善」の側に立ち、彼方にいる「悪」を導くことができるのだろうか。答
えは否です。その一線は明らかであっても、そのとき置かれている境遇によりぼ
んやりとしか見えないかもしれません。まだ若輩の私ですが、これまでの人生に
おいて、その一線が視界不良により見えなかった事もありました。私がその一線
を越えずに済んだのは幸運だったと思います。
幸運も、空気のように漂っているのではなく、道に迷ったとき「そうだあそこ
に行けば何とかなる」と、引き返す場所があって、意思をもって歩まない限り訪
れません。私の場合それは家族の愛でした。「こんな事をしたら、お母さんはど
んな顔をするだろう・・・」と考えることが出来たからです。
世の中には、家族の愛を求めようとしても求められない人々がたくさんおられ
ます。例えるならば、その人々は、真っ暗な夜道に提灯も持たずに放り出された
のに等しいと思います。手探りで歩いていかなければならない人たちに、せめて
足元を提灯で照らして差し上げたいと思います。
専門的なことや、実際の活動については何も分かりませんが、この活動を通じ
て社会のお役に立てるなら幸せだと思います。